年金だけじゃ暮らせない:夫婦で月12万円の現実

定年退職した両親の家計を見て計算した「日本の年金」の本当の姿。夫婦で月12万円で暮らす覚悟と、現役世代が今すべき備え

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約1600語
2026/4/1
父が65歳で定年退職した。母は62歳でパートを辞めた。二人の年金受給額が確定したとき、母から電話がかかってきた。 「ねえ、二人合わせて月に12万円しか入ってこないんだけど」 12万円。夫婦二人で、毎月12万円。家賃なし(持ち家ローン完済)、車なし、都心に住んでいない。それでも12万円で暮らすのは厳しい。 光熱費:約25,000円(電気、ガス、水道) 食費:約50,000円(二人で自炊メイン) 通信費:約12,000円(スマホ2台、インターネット) 固定資産税:月換算約15,000円 医療費:約10,000円(二人分の薬代、通院代) 雑費:約15,000円(衣類、日用品、切削用品) 合計:約127,000円 12万円の年金で127,000円の支出。毎月7,000円の赤字だ。 これは俺の両親の実話だ。父は中小企業で40年働いた。平均的な会社員だった。決して無駄遣いをしてきたわけじゃない。でも年金だけでは暮らせない。これが日本の現実だ。 俺は35歳。あと30年で定年だ。この記事は、両親の年金を計算してわかったことと、俺が今どう備えているかの記録だ。

使い方

年金の受給額を計算する 日本の年金は2層構造だ。 第1層:国民年金(基礎年金)。20歳以上60歳未満の全員が加入。40年間満額納付で月額68,000円(2024年度)。 第2層:厚生年金。会社員や公務員が加入。給与に比例した年金額。 父の場合。40年間、平均年収約450万円で厚生年金に加入。 厚生年金部分:月額約98,000円 基礎年金部分:月額約68,000円(40年満額納付) 合計:月額約166,000円 実際は社会保険料控除等で手取りは少し減るが、ざっくり月16万円強。 母の場合。25年間パートタイムで厚生年金に加入(途中で専業主婦期間あり)。 厚生年金部分:月額約32,000円 基礎年金部分:月額約68,000円 合計:月額約100,000円 夫婦合計:月額約266,000円 ...のはずだった。実際はもっと少ない。なぜか。 理由1:母の専業主婦期間が長かった。国民年金の未納期間があり、基礎年金が満額ではない。 理由2:父の会社は中小企業で、給与水準が低かった。厚生年金の報酬比例部分は平均給与に依存する。 理由3:在職老齢年金の調整。父は65歳まで会社で働き続けたため、一部年金が減額された。 実際の受給額は二人合わせて月約210,000円。そこから所得税と住民税と健康保険料が引かれる。手取りで月約175,000円。 あれ?さっき母が「12万円」と言っていたのは?調べると、母は自分の分だけを言っていた。自分の年金が月10万円で、そこから税金と保険料を引くと手取りで約7万円。父の分は父名義で別口座。合計して月175,000円だった。 でも月175,000円でも厳しい。先ほどの支出127,000円は最低限の生活費だ。旅行、交際費、孫へのお年玉、車の維持費(田舎に住んでいれば必須)、家の修繕費(屋根の葺き替えで150万円かかった)、冠婚葬祭。これらを含めると月200,000円は必要だ。 毎月25,000円の不足。年間30万円。10年で300万円。両親の預金は800万円程度。あと約27年分しかない。平均寿命が85歳だとすると、90歳まで生きる可能性がある。資金が尽きる。 退職金計算ツールで両親のケースを再計算した。退職金は約1,500万円だった。ここから住宅ローンの残債約200万円を返済。残り1,300万円。これを年金と合わせて試算すると、85歳までギリギリ持つかどうかだ。90歳まで生きたら資金不足になる。

プロのヒント

まずはねんきん定期便を確認すること。毎年届く。将来の年金見込み額が書いてある。数字を見るのが怖いかもしれないが、見ないと対策が打てない。退職計算ツールに年金見込み額と現在の貯蓄額を入れて、何歳まで資金が持つかを確認する。 iDeCo(個人型確定拠出年金)を始めること。月額23,000円(会社員の場合)を積み立てる。全額所得控除。運用益は非課税。受け取り時も退職所得控除がある。30歳から始めて60歳まで続けると、月23,000円 × 360ヶ月 = 828万円の元本。年利4%で運用すれば受取額は約1,500万円。これが年金の足しになる。 つみたてNISAも活用する。年間40万円まで非課税で投資できる。20年間で800万円の元本。これも年利4%なら約1,200万円になる。iDeCoと合わせて2,700万円。年金不足を補うには十分な金額だ。 親の年金不足を見越して、今から親と話すこと。将来の介護費用、医療費、住居のバリアフリー工事。これらはすぐに100万円単位の出費になる。兄弟でどう分担するか、事前に話し合っておくべきだ。俺は兄弟3人で話し合った。親の預金が尽きたら、月々の支援を3等分することにした。一人あたり月約10,000円の負担だ。安くはないが、放置すればもっと大きな問題になる。

よくある間違い

最大の失敗は「年金だけで暮らせる」と思い込むことだ。日本の平均的な年金受給額(夫婦)は月約22万円。手取りで約18万円。住宅ローンがあれば、そこから返済が引かれる。持ち家でも固定資産税、管理費、修繕費がかかる。18万円で暮らせる世帯は限られている。 二番目は厚生年金の加入期間を甘く見ることだ。俺の母は専業主婦期間があったため、厚生年金の加入年数が短かった。これが受給額を大きく下げた。共働きを続けることは、単に今の収入のためだけでなく、将来の年金のためでもある。妻が産休育休で一時的に退職した場合、国民年金の第3号被保険者として空白期間を作らないことが重要だ。 三番目は退職金をあてにしすぎることだ。俺の父の退職金は1,500万円だった。中小企業の平均的な金額だ。でも大企業なら3,000万円以上という人もいる。一方で退職金制度自体がない中小企業も増えている。退職金がなければ、預金とiDeCoだけが頼りになる。退職金を前提にした老後プランは危険だ。 四番目は医療費の上昇を無視することだ。高齢になればなるほど医療費は増える。70歳以上の自己負担は2割(年齢や所得による)。月の医療費が5万円あれば自己負担は1万円だが、介護保険料も月々約6,000円かかる。要介護状態になれば、介護費用は月10〜20万円。特別養護老人ホームの入居待ちも長い。これらを年金だけで払うのは不可能だ。 俺は今、月5万円をiDeCoとつみたてNISAに投入している。年間60万円。30年で1,800万円の元本。運用を含めれば2,500〜3,000万円になる見込み。これが年金の足しになれば、老後は安心できるはずだ。始めるのは早いほどいい。複利の力は35歳からより25歳からの方が圧倒的に大きい。でも「遅すぎる」ことはない。今月から始めれば、それだけで違う。

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